猫 (2)

 隣の部屋に、年配の女性が住んでいる。休日など、息子一家と思しき家族が遊びに来て、孫らしき子供がはしゃいでいるので、それなりのお年と思われる。一方、建物一帯を縄張りとするキジ猫がいる。結構大きな猫で、自分のテリトリーを侵犯する猫と日夜闘争を繰り広げている。住宅近辺には心優しき住人が多く、キジがドアの前で文字通り猫撫で声を出すと、食物を与えたり、寒い冬の晩など部屋に招き入れているようであり、隣の女性もその一人であった。

 猫はかなり頻繁に訪れ、撫で声を上げると、女性も何かしら話かけている。その時のキジの声といったら、普段聞いたことの無いような、甘く優しい声なのである。息子家族が来ない時の寂しさからか、女性もキジの訪問を心待ちにしているようで、二人(?)の間には、強固な絆が存在しているように思われた。

 三寒四温の時候となり、温暖な日が混じることが多くなった晩冬の週末であった。顔を洗っていると、いつもの如く、キジが現れ、声を上げていた。しかしその日は忙しいのか、件の女性はなかなか向い入れようとぜず、しびれを切らしたキジも、さらに大きく長く声を上げていた。その時である、件の女性が窓を開け、「うるさい!」と一言言い放ったのである。するとキジの鳴き声はピタッと止み、二度と撫で声を上げることはなかった。最後に何かムニャムニャと、割り切れない声を出しながらキジは去っていった。女性とキジは、疑似親子のような関係に自分には思われた。だから、忙しい或いは虫の居所の悪かった母親に、子がぴしっとたしなめられたように感じられた。以降、女性とキジの関係が崩れてしまうのではないかと心配したが、怒られたことなど無かったかのように、女性と猫の絆は続いている。

 そして、自分とキジ猫の関係も存在する。自分は近寄って撫でたりすることはないが、もちろん排斥もしない。ただ、猫に、変な動作や状況を面白いと感じる意識があるのか興味があり、モーションをかける事がある。車で帰宅すると駐車場のアスファルト上に、キジが寝っ転がっていることがよくある。車を降りてキジを見ると、向こうもすぐこちらを見つける。それから、自分は脅威を与えない距離で、変なおじさんやヒゲダンス的行為をしながら、時折止まってミャーミャーと猫の鳴き真似をしたり(自分としてはかなり似ていると思っている)、皿屋敷の大猫が立ち上がって、ミャミャミャミャ〜と空を掻くような動作など、普段キジと接する人間がしないような行為を見せて、反応を見ている。キジが脅威を感じ、逃げてしまっては失敗であるが、今まで、一度も逃げ出したことは無い。キジが言葉を話せて、「面白くないニャ」とか「つまらニャイ、次」とか言ってくれればわかりやすいのであるが、そうもいかない。欧米の研究者によると、猫はヒトの事を、時々食物をくれる大きな猫とみなしているふしがある。であるならば、その大きな猫のいつもと違う変な行動を見て、「ニャハハー」と笑うのは無理としても、ユーモアのようなものを感じるのか、そのような自我があるのか知りたい訳である。

 自分が行為を開始すると、臥せていた状態から反転して腹を見せ、こちらを見ながら舌で腹部の毛繕いをする事がよくある。リラックスしているようにも見えるが、自分の期待する反応なのかどうかわからない。猫の行動学の知見にあたる必要があるであろうし、何よりも反応として一般化できるほど経験数が多くない。猫の笑いのツボ(有ればであるが)が何処にあるのかわからないので、今後も色々試してみる必要がある。ひと気の無い駐車場で、ネコ真似しながら、懸命に変な行動を猫に見せているオジサンを見かけても、そっと無視して、くれぐれも通報などしないよう、お願い申し上げる次第である。

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