日常小噺10

もうそろそろ家を出ないと間に合わないよ、

と母がせかせる、

そんな事言ったって、

スーツはこれでいいのだろうか、

と言っても選択枝が豊富にあるわけではない、

あまり着たことがない、

細かい千鳥格子のスーツを選ぶ、

白のYシャツを着て、ズボンを履く、

兄がタクシーが来たと言う、

ネクタイはどれにしよう、

そんなもんどれでもいいと兄は言う、

車の中で選ぶことにして、

上着に手を通すと、

三本ほど候補になりそうなものを掴み、

タクシーに乗り込む、

やはり、自分の好きな濃緑の一本を選ぶ、

ほどなく目的地が見えてきた、

神社のような赤い鳥居の見える一角で車を降りる、

敷地に入り、本殿に向かっていくと、

右手に会館のような建物が見えてきた、

急いで中に入っていくと、

そこそこの人数の男女が

何列もの椅子に座り前を向いている、

会場に入る時、

靴下を履いていないことに気がついた、

上履きを履いているので誰も気付かないだろう、

何処に座ろうかと椅子と椅子の間の道を進んでいく、

何の集まりだっけ、とすぐ後ろの母に聞く、

結婚式でしょ、と言う、

誰の、

えー 俺の、

すると、前から三列目あたりに座っていた女性が、

前を向いたまま静かに立ち上がり、

通り道に出ると、ゆっくりと振り返った、

ワイン色のベルベットなツーピースで、

襟や袖に少しレースなどがあしらわれている、

そして、こちらを見て、少し笑ったような気がした、

誰だ、知らない、

早く行きなさいよ、と母が言う、

知らないけど、不快な感じではなかった、

近づくにつれ、自分と異なる波長が流れ込み、

自分の波長と合わさって、

何か新しい周期が作り出されているような気がした、

 

そこで途切れた、

もちろん、夢の話である、

 

洒落た車が近づいてきた、

目の前に止まると、

四角い黒ぶちメガネをしたクセ毛の男が降りてきた、

自分は機体を屈めると、

コックピットを開け、飛び降りた、

これでどうでしょう、と彼はものを差し出した、

彼には、

一度も使用したことのない牛刀を擦り上げて、

登山ナイフに加工できないか、

お願いしていたのだ、

新たにしつらえた皮革製の鞘から、本体を抜くと、

当初からそのようなであったような、

素晴らしい出来であった、

ありがとう、

お礼はどうすればいい、

すると彼は、少しはにかみ、

ガンダムのコックピットに乗せてもらえませんかと言った、

僕はいいけど、上が何と言うか、

 

ちょっと待て、

自分はいつから、

ガンダムパイロットになったんだ、

そんな宇宙軍みたいなものに属していたっけ、

 

そこで途切れた、

最近変な夢をみる、