世界 (73)

  「蒼穹のファフナー」は好きなアニメの1つである。登場人物の一人が自分と同じ苗字で、親しみを覚えるという事もあるかもしれないが、やはりその設定が自分好みである。いかにも瀬戸内海にあるような、自然豊かで、平和でのどかな島が、実は科学技術の上に構築された、閉じられた世界であったわけである。

  アルヴィス要塞艦上の竜宮島をはじめとする島々、それらはすべて人工物であり、施設であるという。そして、大洪水1 (20)に書いたように、人々は、襲来者フェストゥムに対抗するアルヴィス構成員としての第一種任務と、日本の平和な文化を残すという第二種任務を持ち、日々生活しているわけである。

最近、同アニメの再放送が始まったので、録画して見ていると、以前、何とも思わなかった事が気になってくる。

 

日本の街並みが再現された島上には、主人公が働いている喫茶店や食堂などがあり、結構流行っているわけであるが、これらのお店ではお金を払って飲食をしているのか などと、ふと思ってしまう。自分が記憶している限り、金銭のやり取りをする場面は無かったように思うが、他にも、菓子店や服飾店、美容院、駄菓子屋、銭湯など、通常ならばお金を必要とする店があるわけである。

  出て来ないだけで、支払いはあったのだとすると、それはそれで興味深い事態である。島内にも何らかの金融機関が存在し、消失した日本国が発行した貨幣を留保しており、それを流通させている可能性もある。アルヴィスの技術を用いれば、同じ貨幣を発行することも十分可能であろうが、別に竜宮島独自の通貨があると考えることもできる。

  しかし最も有り得そうなのは、電子通貨である。アルヴィス構成員は、身分を証明する或いは要塞艦内部への進入時に使う、電子カードを所持していると思われるので、そこに電子通貨がチャージされており、決済は店の端末を通して行われると考えるわけである。

  実際の貨幣のやり取りがなくても、対価を支払う実体経済が存在しているとすると、それはそれで、さらなる仮定をもたらす。アルヴィス構成員には、飲食をしたり、物品を購入したり、サービスを受けたりする、いわゆる生活をするための基本的収入があることになり、それを決める部門も存在することになる。真壁司令が一番高収入かもしれないが、いつ命を失っても不思議ではないファフナーパイロットも、年齢に反して高収入ということも考えられる。

  しかし、上に述べたように、繁盛する店舗が存在したり、立場による収入の違いがあるとすると、新たな問題が提起される。そのような状態が長年続くと、島内やアルヴィス内に、貧富の差ができてしまうということである。フェストゥムに対抗すべきアルヴィスで有り、竜宮島であるのに、貧富の差の発生は、色々問題があるように思われる。

  ここまで考えてきて、やはり、竜宮島には貨幣経済は存在しないという考えに落ち着きつつある。そもそも、島上の店舗や施設における生活は、平和な日本の文化を継承する任務であると最初に述べられている。しかし、際限なく消費したり、利用できるというわけではなく、年齢や性別、成長状態に応じた、食品や食事、或いは身の廻り品の利用に関するチャージがあると考えるのが普通であろう。

 

などと、SFなのに、アニメを見ながら、現実世界との繋がりで突っ込みを入れているわけである。ちなみに南極の昭和基地では、滞在者の飲食や間食など、すべて無料だそうである。