キノコ2 (24)

  夏から秋にかけて、雨が降った翌日に、海岸沿いの松林に入ると、松の木の下の白砂や礫の上が、スギナの緑を挟みながら、紫の針でびっしりと埋め尽くされているのを見ることがある。それは、ムラサキナギナタタケ(Alloclavaria purpurea)の群生である。そのインパクトは中々のもので、直径5ミリ高さ12センチ程の紫の筒が、真っ直ぐにのび、林立している。ホウキタケの仲間にも紫色を呈するものがあるが、途中で枝分かれし樹枝状構造をしているのに対して、ムラサキナギナタタケは一筆(ふで)である。

  可食菌であると聞いていたので、本命のキシメジやアミタケの成果が今一の時、収穫し食したことがある。外見のインパクトに反し、脆く、無味、無臭で食味に乏しい菌であったが、この菌は美しいので、軽く湯通ししたものを、冷や奴の上の青葱の横に数本渡して彩りを添えたり、サラダに加えるのが良いかもしれない。或いは、大量に取れるので、軽く甘酢漬けにして食すというのも考えられる。しかし、ムラサキナギナタタケについて自分が興味があるのは、食材としてよりも、その色である。

  その鮮やかな紫色がどのような分子に由来するのか、多くの果実に含まれるアントシアニン系化合物か、はたまた、昨今有名なレスベラトロール系か、或いは全く新たな化合物であるのか、そして、その化合物は抗酸化物質なのか、寿命延長効果や抗癌効果を持つのか等興味が尽きない。キノコの二次代謝はあまり解明されていないので、新物質が登場する可能性もあるわけである。

  今年もオリンピックが終わった頃、松林に入り、この紫の群生に心ざわつかせることになりそうである。