紙 (84)

火星の居住ミッションが順調に進み、居住コロニーが増加し、コミュニティーのようなものが形成されて行った時、一つの疑問が湧き上がる。そのコミュニティーに紙の文化は存在するのかということである。 勿論、タブレット端末のようなものが、情報伝達に使わ…

読書 (83)

在来線を乗り継いで行くと、同じ車両の人が、次の列車でも近くにいることがある。そのような人達が、目的地まで一緒かと思うと、そうでもなく、いつの間にか居なくなっているわけである。列車内で本を読んでいる人がいると、すぐ目が行く(勿論、どのような本…

組合せ (82)

以前、(歩く (23))で、寮生活時代にイベントの炊き出しで作った「フルーツおにぎり」の話を書いた。同おにぎりの話はなかなか好評だったので、今回はその流れで、いつもはその食べ物にあまり使わない食材を用いた食べ物の話である。何処かの回で触れている物…

本人 (81)

少し前に聞いた話である。 友人にマイナンバーカードのポイントの付与期限が 迫っていることを教えられた母が、 役所に行った時のことである。 カウンターで、写真等を提出すると、 係りの中年の女性が、母と写真を何度も見比べながら、 訝しげに、 「この写…

段階 (80)

姿(79)に、来るべき地球外知的生命体と地球人類の接触の問題について少し触れた。その続きである。 さて、ボイジャー或いはパイオニアのメッセージを受け取り、特異点を跳躍するような恐るべき技術により、地球近傍に到達した来訪者は、今しばらく時間をかけ…

日常小噺10

もうそろそろ家を出ないと間に合わないよ、 と母がせかせる、 そんな事言ったって、 スーツはこれでいいのだろうか、 と言っても選択枝が豊富にあるわけではない、 あまり着たことがない、 細かい千鳥格子のスーツを選ぶ、 白のYシャツを着て、ズボンを履く…

姿 (79)

「幼年期の終り」は、アーサー・C・クラークの長編SFである。SF好きなら、一度は耳にした事があるのではないだろうか。内容を説明する必要もないぐらいであるが、中盤までの概要は以下のようである。 冷戦時代のとある日、大都市上空に、巨大な宇宙船が飛来…

甘味2-2 (78)

話は少し横であるが、日本人は、欧米人と比べてざっくり十年ほど寿命が長い。寿命には、人種としての遺伝的素因やライフスタイル、気候や環境など、様々な要素が関係してくるわけであるが、食生活の違いも大きな部分を占めていると考えることができる。欧米…

甘味2-1 (77)

以前、甘味のことを書いた(甘味 (8))。今回はその第二段である。とは言ってもどのように話を進めたら良いか、そこで、ネットにしばしばある 〜で打線を組んだ、という形式にのっとり、それぞれの印象や思い出について、綴ってみたい。 原則として、たくさん…

子孫4 (76)

『法華経』サンスクリット本の観世音菩薩普門品によると、極楽浄土では性交が行われない代わりに、蓮華の胎に子供が宿って誕生するという。 これは、これまでに述べた科学的手法によって、交尾を経ず子孫が形成される未来的状況を暗示しているようにも思われ…

日常小噺9

某深夜スーパーのディスカウントコーナーには、普段あまり手にしたことのない食品が置いてあることがある。先日も同コーナーでジャックフルーツの缶詰めが積んであるのを見かけた。ジャックフルーツ(パラミツ)といえば、結構好きな果物で、昔、熟した果実を…

未来2 (75)

1960年代、1970年代は、欧米SF映画の黄金期である。そこには、以前書いた「猿の惑星」シリーズも勿論含まれるわけであるが、他にも注目すべき作品が幾つかある。今回はその流れから2作品ほど印象を述べてみたい。 荒廃した陸上ではもはや穀物生産や畜産はで…

日常小噺8

以前、東北の地方の村に住んでいたことがある。 その時、何かの集まりで宴会に参加した、 宴会は村の公民館のような所で行われ、 和室の大広間に二、三十人ほど集まっていた、 宴会では、持ち寄った料理やツマミ、 それに、建物には立派な調理室があるので、…

未来 (74)

数ヶ月に渡る巡光速飛行を経て、テイラー大佐一行は、とある星の湖に不時着する。水没する宇宙船から逃れた一行が目にしたのは、猿に似た異形の生物が支配する世界であった。一行はこの猿人に囚われ、騒動に巻き込まれていく。もうお分かりであろうが、これ…

世界 (73)

「蒼穹のファフナー」は好きなアニメの1つである。登場人物の一人が自分と同じ苗字で、親しみを覚えるという事もあるかもしれないが、やはりその設定が自分好みである。いかにも瀬戸内海にあるような、自然豊かで、平和でのどかな島が、実は科学技術の上に…

刀2 (72)

以前、日本刀の事を書いた(刀 (50))、今回はその続きである。最近は便利なもので、現代刀工による作刀動画が、某動画サイトにたくさん挙げられている。本当は他の動画が目的で同サイトに訪れたのに、お薦めなどにあると、ついそのまま作刀動画を見てしまい、…

美蛾 (71)

蛾の話である。日本に棲息する美しい蛾というと、すぐ思い浮かぶのがオオミズアオ(大水青:Actias aliena )(図1.A)である。稀に郊外の建築物の壁などに張り付いているのに出くわすと、その何とも言えない、青というよりも緑がかった乳白色、特徴的な尾状突起…

お知らせ

当ブログでは、同じテーマでシリーズになっていたり、以前の記事の続きを、だいぶ経ってから掲載することがあります。今回、新たに、そのような記事を、1つの記事として目を通せる、遠固人ブログの選択纏めブログのようなものを作りました。 シリーズものは…

核融合2 (70)

以前、核融合 (12)に、 「・・・まず低温に保持された燃料ペレットを、中心点で連続的に爆縮するのは、ほぼ不可能なので、核融合燃料としての燃料ペレットの使用は放棄する。燃料は、トカマク型同様、二重水素と三重水素の混合気体(重水素のみでD-D反応の可…

パフィー (69)

2035年1月27日は、歴史上記念せられるべき日となった。地球上で知能が高い猫の一人(一匹ではない)と考えられていたパフィーさんが、ヒトの言語を、それも日本語を意味あるものとして発した初めての日となったからである。この一見、マイナーなニュースは地方…

日常小噺7

今日は天気が良く、 朝から爽やかな風が吹き、緑も美しい。 近くの家では、 水道関係の業者が来て、 車から降ろした自家発電機を作動させ、 何やら作業をしている、 そこに、 サントリー・グリーンダカラのCMに出てくる、 ムギちゃんのような可愛い女の子が…

動物-肉2 (68)

近年の人工肉、培養肉産業の拡大には、動物に対する愛護的感情、肉利用に関する宗教的問題、家畜の排出するメタンガスの問題、畜産業としての環境の悪化など、複数の要因が関係しているわけであるが、細胞培養技術、特に大規模培養技術の進展が寄与するとこ…

動物-肉 (67)

哺乳動物の進化上の話題で驚いたことが二度ほどある。一つは、だいぶ前のことであるが、アフリカの中央領域や南アフリカに生息するケープハイラックス(Cape Hyrax, Rock Hyrax, Procavia capensis)という小動物が、ゾウに近縁の動物であることを知った時であ…

日常小噺6

自分は野菜好きで、しばしば大量に購入することがある。その購入した葉菜等に、時折、生き物が付いていることがある。 以前、キャベツの外側の葉をとると、モンシロチョウの幼虫と思われる青虫が勢いよく動き出し、びっくりしたことがある。また、購入してし…

火星-居住5 (66)

(火星-居住4 (65)より) そして、隔壁内の、先に述べたユニットではない建家に浴室を作ることも想定され、さらに推し進めると建家の一部を開放系にし、露天風呂のようなものを構築することも考えられる(日本人的な発想ではあるが)。このように、身体の清潔化…

日常小噺5

先日、帰りに某スーパーに寄った。夕食は何にしようかと店内を回っていると、鮮魚コーナーで大量の刺身の盛り合わせセットを見かけた。営業時間も終盤に入ってきて、売り切ってしまいたいという意図からか、少し値下げもしている。刺身を買うことなどあまり…

火星-居住4 (65)

(火星-居住3 (63))より さて、この様な隔壁で覆われた居住地が、一定の区域に複数できると、それら基地どうしが回廊で結ばれることが予想される(図4.c1)。また、個々の居住基地表面や回廊から気密域が拡張されることも考えられ、それは、既存の外壁を構造の…

火星-娯楽 (64)

ISSの人員は、日々、計画された観測や実験の実施、健康維持ための運動、地上への報告等があり、決して暇ではないと推定される。伝え聞くところによると、食事が最大の楽しみということであるが、自由時間だってちゃんとあるはずである。では、その自由時間を…

火星-居住3 (63)

(火星-居住2 (62)より) ユニットは、最初の基地の構築後、必要に応じて補給ミッションにより追加され、ハブから分枝する枝のような構造に連結されたり、或いは計画に沿って別の構造に連結されうる(図1. step1、2)。ユニットの幾つかは、水回収、酸素発生、二…

火星-居住2 (62)

(火星 -居住 (60)より) そして、この原子力電池は、火星由来の水の利用や、惑星の環境改変の初段としても、重要な役目を果たす可能性がある。 元々、液体の水が拠点基地近傍にあり、そのような水を基地に引くのが最も簡単な方法であるが、科学観測によれば、…