組合せ (82)

以前、(歩く (23))で、寮生活時代にイベントの炊き出しで作った「フルーツおにぎり」の話を書いた。同おにぎりの話はなかなか好評だったので、今回はその流れで、いつもはその食べ物にあまり使わない食材を用いた食べ物の話である。何処かの回で触れている物もあり、その時はご容赦、最初は、ご飯繋がりから。

 寿司を食べていて、口の中をリセットしたい時、カッパ巻や芽ネギの軍艦を食べるというのは、よく聞く話である。これらに加えて、筋を外して細切りにしたセロリなんかも良いが、もう一つ、山牛蒡の味噌漬けは如何であろうか。

 中部地方の漬物店や百貨店の専門店街に行くと、山牛蒡味噌漬けなる物が販売されていることがある。山牛蒡(ヤマゴボウ)とは、いわゆる、キンピラや柳川鍋に入れる牛蒡とは異なる植物(キク科アザミ属モリアザミ)であり、独特の芳香を放つその根は、飛騨、美濃等で、山菜として親しまれている。この山牛蒡を、コクのある赤味噌と調味料で漬けたのが山牛蒡味噌漬けである。

 山牛蒡味噌漬けは父の好みであり、その嗜好を受け継いでいるのか、遠方にいても、時折、無性に食べたくなることがある。さて、この山牛蒡味噌漬けを極細切りにし、シャリの上にのせたのが、口直しにピッタリである。赤味噌の旨味、山牛蒡の香りとシャッキリ感が、一体となって、他のにぎりにはない味覚をもたらす。細切りの太さにもよるが、味が濃いのであまりのせ過ぎず、数本のせ醤油なしで食べるのが良いようである。また、寿司とは関係ないが、この山牛蒡味噌漬けを微塵切りにしたものを、少量、バニラアイスやソフトクリームにトッピングすると、アイスの旨味が引き立って、これまでと違う一品になる。お試しあれ。  

 次はチョコの話である。ジュンサイは、主に酢の物、汁物、麺類の具として使用されるが、ジュンサイ好きの自分としては、あの独特の食感と味を、他の料理や食物に、もっと生かすことができないかと考えることがある。そこで思いついたのが、ぬめり(27)に書いたように、ジュンサイの、ボンボン・ショコラである。加熱非加熱のジュンサイを、濃度を調節したホワイトキュラソーかマラスキーノ等リキュールに浸け、チョコの凹部に封印することにより出来上がるわけであるが、噛み砕いた時に、リキュールとともに溢れ出すプルプルの異端児が、新鮮な衝撃を与えるのではないだろうか。

 

(ジュンサイは、若芽や幼葉を包むゼリーを保護するために、袋詰め、瓶詰めというパッケージで流通しているが、そろそろ、最新の凍結乾燥技術を用いた製品が出て来てもよいような気がするわけである。要するに水やお湯を注ぐだけで、あのプルプル食感が楽しめるというわけである。このような製品は、従来品と両立可能でありながら、即席の、味噌汁、吸い物、コンソメ、麺類の具として手軽であり、昆布茶や緑茶に入れて、新しい楽しみ方もできる)

 

 もう一つ、チョコの具として良いのではないかと思うのが、銀杏である。隣国では砂糖漬けが販売されているようなので、チョコの具としてはそれほど意外ではないのかもしれない。あの独特のモチモチ感や苦味を残すよう、少し柔らかく加工し、丸ごと一粒を、甘みを抑えた、ミルクかホワイトチョコレートで包むわけである。

 

さて、今回は、異色の寿司ネタとチョコの話をした。食は組合せであり、美味しければ何でも有り とも言える。他にも幾つか考えているものがあるので、また、機会があれば紹介していきたい。