キノコ1 (3)

  大学時代は寮住まいであった。下の階に住むとある学生の実家が地主で、松茸山を持っており、その年の秋は豊作だったことから、「皆さんでどうぞ」ということで、大量の松茸が送られてきた。じつに羨ましい話である。寮は、日曜祝日を除き朝夕の食事が出るので、松茸は、平日の夜食や日曜の自炊、飲み会の料理等に使われ、好評だったようである。松茸が何本も入った即席ラーメンというのも、あったかもしれない。それでも、まだまだ残っていたようで、最後の方は、誰にも見向きされず、箱の底で半腐れ状態で悲しく干からびていたそうである。この話を聞いた時、そうなる前に一言声を掛けてくれればと思ったものである。

  今の所、松茸を嫌という程食べたことはないが、他のキノコならある。当時は、キノコづいていたこともあり、同じ寮生のN君と別の学部の先生が主催する、キノコ採集会に参加していたことがあった。N君は採集会以外でも活動しており、結構ナイスな発見をしていたことを覚えている。そのN君が、夜、興奮しながら部屋に入ってきた。見れば、手には硬球やゴルフボールがたくさん入った大きなビニール袋を持っている。しかし、それはボールなどでは無かった。それはノウタケであったのである。

  ノウタケ(Calvatia craniiformis (Schw.) Fr.)は文字通り、脳に似た外観を持つホコリタケ科のキノコである。ホコリタケ科の常で、成熟すると中が胞子化し食用に適さなくなるが、それまでは美味な食用菌である。聞けば、いつもの単独行の最中に林の中で偶然群落を発見し、これだけの量を発見することは珍しく、矢も盾もたまらず採ってきたとの事であった。彼が採取したノウタケはどれも胞子化しておらず、十分食用に耐えるものであった。汁の具にすると良い出汁がでて、本体がプリッとしてじつに美味であった。残りはソテーしケッチャプを少しつけて食べたが、これも独特の食感と旨味で美味であった。2時間ほどかけ、ノウタケを食べきり、堪能したのであった。

  近年、スーパー等で新参のキノコを目にすることがある。しかし定着するものはほとんど無い。それは現在あるメジャーなキノコで代用がきくからであり、逆に言えば、現在あるキノコと異なる魅力があれば、定着する可能性があるのではないだろうか。上の経験から、スーパーの次の仲間になるキノコとして、自分的にはノウタケが有力候補ではないかと考えている。もちろん人工栽培が可能としての話であるが。その魅力は、やはり濃厚な旨味であり、汁の具、筑前煮、おでんに最適である。パスタの具なんかにもよい。商品としては成熟前に出荷されることになるが、「旨味小丸」とか「味ノウタケ」とか「ダシノウタケ」なんていう商標はどうであろうか。

  商品化されれば、また口にする機会があるかもしれないが、あれだけのノウタケを食べることは、おそらくもう無いであろうと思う今日この頃である。

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