ぬめり (27)

今回はジュンサイの話である。

  ジュンサイ(蓴菜 : Brasenia schreberi)は、多年生の水生植物であり、ゼリー状のぬめりで覆われた若芽が、食材として珍重されている。日本では秋田県三種町で主に生産されているが、梅雨明けから夏の収穫期に同地を訪れると、少し小型の丸葉でびっしり覆われたジュンサイ沼が、比較的開けた林間の土地にポツポツあるのを見る事ができる。訪問の帰りには、近隣の道の駅やスーパーで、ジュンサイを買い求め、いろんな食べ方をしていた。

  ジュンサイは、細心の注意を払えば、かすかな青味や甘味を感じるが、基本的には無味、無臭である。その特色はなんと言っても、外側のゼリー状のプルプルと中央の若芽が織りなす食感である。おすましの具や酢の物は、一般的であるが、大量に手に入った時は、ラーメンや饂飩にドボドボっと入れたり、卵かけご飯をする際、生卵に少量混ぜて食べるのも良い。なお、生ジュンサイは、ぬめりに沼の水と同じ微生物を含む可能性があるので、煮沸、加熱処理等の下ごしらえをしてから使用するのが基本である。

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ジュンサイの少し異色な使い方、食べ方を3つ述べると、

1つ目は、加熱処理後、二杯酢に浸したジュンサイを、ハンバーガーのピクルスの代わりに使うと言うものである。程よく甘酢味となったジュンサイをパテの上或いは下に挟んで食べると、ピクルスにはない独特の食感を味わえる。ジュンサイを挟んでから時間が立つと、バンズが水分を吸って、プルプル感が失われるので、なるべく早く食す必要がある。

2つ目は、地元の寿司屋に出てきそうであるが、ジュンサイ軍艦である。加熱処理したジュンサイを、カツオ出汁か、白出汁に数分漬けて軍艦に盛る。ツル、コリとした味わいが、新鮮である。

3つ目は、ボンボン・ショコラである。加熱処理したジュンサイを、ホワイトキュラソーかマラスキーノ等のリキュールに浸け、洋酒や流動性の高いプラリネをセンターに収めるのと同様の手法で、チョコに封印する。甘い方が良い場合は、リキュールに砂糖を加えて調節する。ホワイトチョコを使用して、ブルーキュラソーに浸けたジュンサイを用いれば、視覚的にも面白いものができる可能性がある。

  さて、日頃、食材として、ジュンサイと大いに関係を持ちながら、奥底では、ジュンサイにも、何らかの生理活性物質が含まれているのではないかという期待も多少あるわけである。毎日30gのジュンサイを与えられたモデル動物群は、対照群よりも動脈硬化が改善したとか、コホート調査で、週に一度以上ジュンサイを食べる集団は、そうでない集団よりも感染症罹患率が低いとか、言うようにである(全国のジュンサイ栽培農家が大いに盛り上がりそうであるが)。

  今の所、そのような情報は得ていないが、今年も食材として大いに摂取することになりそうである。

 

⁄ ⁄  最近、三種町役場が出しているジュンサイに関する小冊子を偶然入手した。それによると、ジュンサイは、抗酸化活性やポリフェノール含有量が高く、メタボリック症候群の改善にも効果があるということであった。引用文献 (J Nat. Med. 65:670-674, 2011)によると、ジュンサイ抽出物は、高脂肪食を与えられたマウスにおいて、腸間膜及び精巣上体における脂肪蓄積を抑制したということなので、動脈硬化の発症や改善にも、一定の効果を示す可能性がある。ちなみに、上にジュンサイをスイーツとして用いる例を書いたが、小ぶりのジュンサイならば、下ごしらえしたあとシロップに浸け、タピオカドリンクのようにジュンサイドリンクとして味わうのも、ツルッとして有りかもしれないと思った。いかがであろうか。・・・6/28追記  ⁄ ⁄