子孫2 (54)

「子孫 (46)」において、

  一方、有効な手立てを打てず、少子化の傾向がこのまま続き、人口問題がより切迫し、以前「任務? (22)」に書いた状況を迎えているかもしれない未来、価値観や倫理観の転換を迫る、科学的な方法が取られる可能性もある。

  体外受精はヒトを含めた多くの哺乳動物ですでに確立されており、近年長足の進歩を見せる人工子宮のヒトへの適用も遠からず可能になると思われる。このような体外授精や人工子宮による、自然分娩によらない子作りが現実となった時、子作りにおいて、カップルは冷凍保存したお互いの配偶子の使用を決断するのみである(男女のあり方が変わり、カップルでなくても良いということになる可能性もある)。この方策がとられることによって、少子化問題は、取り敢えず転換点を迎える可能性がある。

「 ヒトが子作りにおいて、交尾、妊娠、分娩から解放された時、つきなみではあるが、遠い祖先が二足歩行の開始によって腕の自由度を得たように、ヒトの精神に新たな状況が生まれ、男女間の関係性や社会が変化する可能性もあるわけである。」

と述べた。今回はその続きである。

  人々は配偶子の活性期に、自ら或いは国の補助を受けて、自分の配偶子を保存することが当たり前となり、当然、その配偶子を保存管理する機関もより一般的になると考えられる。その頃には、現在よりも健康寿命も伸びていると推定されるので、保存した配偶子を用いて第一子を得る年齢に幅ができる可能性がある(例えば、それまで20〜30代であったのが20〜40代に移行するように)。経済的或いは環境的基盤が整ってから、子供を得ようとするわけである。

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  体外受精、人工子宮を用いた子作りは、当初、在命の夫婦や恋愛関係(?)にある個人の配偶子を用いて行われるわけであるが、時を経るにつれてその適用も広がり、やがて、本人同士の同意があれば、家族や一定の親族を除いて、子作りが可能となる可能性がある。また、一方の配偶子の提供者が生存していない場合(現在においても、逝去した夫の保存精子を用いた妊娠は稀に見られる)や、経済的に裕福な一族が、デザイナーベビーではないが、特定の意図の元に、(もはや本人の同意も何もないが)、男女ともに物故者の配偶子を用いて子作りを行なう可能性もある。このような状況において、配偶子の提供者は、生まれた子の遺伝的な両親ということになる。

 

(自分は以後、このような配偶子の提供者を、子に対する遺伝的両親(イデオン)、または遺伝的婚姻者(イデコン)と呼ぶ事にする。)

 

  男女の恋愛感情は、根源的には種の保存的側面を持つわけであるが、子孫形成の方法が、生物的方式から科学的方式に移行した時、イデオンは、子を育て、遺伝的一族を維持する同志的存在になるかもしれない。そして、科学的方式による子孫の継続が何世代も続くと、今ある状態での恋愛感情も変容する可能性がある、特に、女性は、子作りの重要な部分から肉体的にも精神的にも解放され、何か次の段階に入る気さえもするわけである。

  一方、科学的方式が一般的となった未来においても、交尾、妊娠、分娩という従来の子作りの方式も残存していると思われる。しかし、それは、都会においてクラシックカーに乗るような、好事家の懐古趣味のようなものになるかもしれない。

  さて、科学的方式の行き着く先はどのようなものであろうか、社会性昆虫の世界に似たものであろうか。興味深い問題であり、今後とも引き続き考察して行きたいと思うわけである。

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