子孫 (46)

  少子化は社会や民族の維持、継続という点で切実な問題である。近年、自治体や政府はこの問題に対処する様々な手を打っているようであるが、今一つ望むべき結果を得ていないようにも思われる。今回は、ハードなものからソフトなものまで、この問題の対処法について少し考えてみたい。

  人口を増やす最も強力な手段とは、どのようなものであろうか。おそらく、それは創作物の世界にしか存在しないものであろうが、一つには、政府や統治者が、適齢期の男女を、有無を言わせずペアリングして結婚させ、脅迫下に、或いは経済的、社会的優遇の提供を前提にして、子作りを強制する というようなものであろうか。さらに人権を無視すれば、より直截的な方法をとることも可能であるが、そうなると家畜の種付けとほぼ同じということになる。すなわち、上に述べたのは、法や権力によって婚姻や子作り自体を強制するというものである(SF的に言えば、人口増加法とか国土人員等強化法などと言うことになるのかもしれない)。

  少し前のことであるが、一人目の出産に対し100万、二人目に対し80万、三人目に対し50万の出産祝い金(もう少し高額であったかもしれない)を提供するという施策を記した、何処かの地方公共団体の資料を見たことがある(無事三人目を出産して祝い金を受け取った主婦の喜びの声も添付されていたわけである)。また、ごく最近の情報では、自治体-政府が、30才前に結婚した新婚カップルに対し、60万を提供するという計画も検討されているようである。現実社会では、子作りや婚姻を強制することは出来ないので、このような経済的、金銭的メリットで、それらを誘導する方策がとられることになる。

  一方、有効な手立てを打てず、少子化の傾向がこのまま続き、人口問題がより切迫し、以前「任務? (22)」に記した状況を迎えているかもしれない未来、価値観や倫理観の転換を迫る、科学的な方法が取られる可能性もある。

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  体外受精はヒトを含めた多くの哺乳動物ですでに確立されており、近年長足の進歩がある人工子宮の、ヒトへの適用も遠からず可能になると思われる。このような体外授精や人工子宮による、自然分娩によらない子作りが現実となった時、子作りにおいて、カップルは冷凍保存したお互いの配偶子の使用を決断するのみである(男女のあり方が変わり、カップルでなくても良いということになる可能性もある)。この方策がとられることによって、少子化問題は、取り敢えず転換点を迎える可能性がある。

( ヒトが子作りにおいて、交尾、妊娠、分娩から離れた時、つきなみではあるが、遠い祖先が二足歩行の開始によって腕の自由度を得たように、ヒトの精神に新たな状況がもたらされ、男女間の関係性や社会が変化する可能性もあるわけである。)

  とは言っても、そのような状況になるのが十年以内というわけではない。それまでに打つ手もまだ有りそうである。先に述べた、婚姻等に対し、金銭的、経済的メリットを提供する方法は重要ではあるが、本質的ではないように思われる。家族を持とうという者は、それら金銭的メリットのために結婚するわけではなく、恋愛感情が根底にあるからである。そこで、自分は、男女の出会いや恋愛感情の育成に重きを置いた、マイルドな方法を一つ考えてみた。それは簡単なことで、男女に良い雰囲気で食事をさせるというものである。

  自治体や政府から、未婚の適齢期或いは婚姻予備期(例えば23〜40歳)にある男女に、年に数度、一流レストランや和食店の食事利用券(例えば2〜3万円程)を送付するようにする。受け取った男女は、一定の期限内に未婚の異性を伴ってお店に行き、食事を楽しむことになる。もちろん利用券は食事後に店に提出され、両者の確認(免許証、保険証など)と共に、正規の使用であることが確認されるわけである。店側は利用券のコード等の入力によって、自治体や政府からの支払いを受けることになる。

  婚姻には至っていないがすでにカップルである男女に食事券が送付された場合は、喜んで食事を楽しみ、さらに理解を深めれば良い。そして、問題はそのような婚姻縁者を持たない男女である。そのような男女は、とりあえず一緒に行ってくれそうな恋人未満の異性や知合い(食事券配布資格者の独身者)を見つけて、食事を楽しむことになる。

  一方、多くの場合、食事券を送付された者は、その券を利用せず期限が過ぎてしまうことも想定できる。そこで、券の未使用者に対しては、敢えてペナルティを課すことも考えられる(そこまでしないとこのシステムが稼働しない可能性があるからである)。具体的には、食事券を使用しないと、額面分の金額が税金の控除額から引かれたり、翌年の健康保険料に加算されるようにするわけである。

  食事券を利用すれば、未婚の適齢期の男女が、フレンチや寿司等を負担なく楽しみ(理解を深める)ことが可能であるが、放っておけば要らぬ金銭的デメリットを受けることになる。このシステム(婚姻縁者等支援法とでもいうべき法制の一部のようなものであろうか)が稼働すれば、適齢期にある独身男女の接点が増加し、お互いの理解が進み、結果として婚姻率そして出生率の向上がもたらされると思うわけであるが、いかがであろうか。