山椒 (53)

  前回、(解放(52))で述べたように、西日本の川では、チュウゴクオオサンショウウオ (Andrias davidianus)と在来のオオサンショウウオ(Andrias japonicas)の交雑が進み、オオサンショウウオの純系が風前の灯火の状態にあるという。ということは、各地の主要な動物園や水族館には、両生類館や両生類コーナーがあり、しばしばこの最大の有尾目であるオオサンショウウオが展示されているが、施設側がいつ頃どこで採取された個体を入手したかによるが、展示個体が交雑種である可能性は十分にあるわけである。

  自分が、幼き頃夢中になったテレビ番組に、同年代の方ならよく知っている横山光輝作の「仮面の忍者 赤影」がある。忍者ものでありながら、怪獣も出てくるという一粒で二度美味しい特撮番組であったが、その中で今でも印象に残っている怪獣がいる。それは、第3部の根来編で、根来十三忍がひとり、渦巻一貫斎が操る「大怪魚ガンダ」である。

  実は、この「大怪魚ガンダ」は、元々は寺近くの渓谷に棲むオオサンショウウオであり、一貫斎によって運ばれ、忍法の笛の音により巨大化し、「大怪魚ガンダ」となるわけである。そして、確か巨大化にあたって、オオサンショウウオは途中から後ろ足立ちとなり、そのまま二足歩行の怪獣となる。完全水性で長く扁平な胴部を底につけて主に生活しているオオサンショウウオが、あの胴体に比して短く華奢な後ろ足で立ち、二足歩行するようになるわけである(ガンダとなった時点でもう華奢ではないが)。しかも両生類なのに火炎も吐くという。

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  このあまりにも斬新な怪獣化に異を唱えるつもりなど毛頭ないが、水辺や動物園にいるオオサンショウウオは、捕食時以外は穏やかで攻撃性とはほど遠い存在なので、やはり笛の音の力により戦わされている感じがし、少し不憫な気もするわけである。一方、二足歩行のオオサンショウウオという発想は、意外にも起源が古いものである。1936

 

(最近はゴジラ関係の映画が評判であるが、このガンダを登場させて、「ガンダ対ガメラ」(サンダ対ガイラを少し意識している)と言う特撮映画を作ってはどうかと思うわけである。・・・山の古寺に代々秘匿された一本の笛があった。古文書によれば、天変幕異極まる時、吹くことが許され、その時「岩蛇」蘇り、難に立ち向かうであろうと・・・折しも次元監獄から放たれた上位自我Pは、地球にたどり着き、地球人を使って存在の試験を行おうとする。Pにより操られたガメラは、都市を破壊し、その脅威は古寺の山にも近づきつつあった。その時、住職の娘咲は、禁断の笛を手に取る・・・  というのは即興のエッセンスであるが、仮面の忍者には、ガンダ以外にもウルトラ物等にはない個性豊かな怪獣そして忍者が登場し、それらもまた魅力的なわけである。映画まで行かずとも、現代の特撮技術を用いた令和版「仮面の忍者 赤影」を見たいと思うのは、ファンの切なる願いである。) 

 

年に出版されたカレル・チャペックの「山椒魚戦争」(War with the Newts)には、言語を解し、二足歩行するオオサンショウウオが登場する。本編では、インドネシアのとある島で、件のオオサンショウウオが発見され、真珠採取の便利な労働力として利用されるところから物語は始まる。両生類故の個体数の著しい増加や、彼ら自身の文明化にともない、人間社会を多様に補完するようになり、 ついには武装させられ兵としても利用されるようになる。そして、ある時、各地で地殻変動が起き(彼らが引き起こしたものである)、人間社会に反旗を翻し、彼らと人間との間に奇妙な戦争が始まるというわけである。

  人間が労働力として導入した存在が進化し、最終的に人間社会に脅威をもたらすというスタンスは、同じチャペックの「R.U.R.」や、「猿の惑星・征服」、一連の「ターミネーター」シリーズ、新しい所では、放映中の「Vivy-Fluorite Eyeʼs Song-」にも見られ、SFにおいて常套な展開と言えるのかもしれない。

 

さて、オオサンショウウオ(大山椒魚)は、以前は食用とされており、捌いたり、興奮すると、その名前の由来と言われる山椒の芳香を放つという。であるならば、戦闘中のガンダも山椒の香りを放つ、香りの良い怪獣であり、倒された後は、現地人に美味しい食材として分配されたと考えることもできるわけである。

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