火星-居住4 (65)

(火星-居住3 (63))より

  さて、この様な隔壁で覆われた居住地が、一定の区域に複数できると、それら基地どうしが回廊で結ばれることが予想される(図4.c1)。また、個々の居住基地表面や回廊から気密域が拡張されることも考えられ、それは、既存の外壁を構造の一部として外側に隔壁が形成され、構築後は元の外壁を取り去り既存の気密域と一体化されるもので、表面的には酵母ヒドラの出芽に似ている(図4.c2)。さらに、既存の気密域や回廊をベースとして増築や拡張が進行すると、ちょっとした町の様相を呈するようになる(図5.c3)。

 

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 (図4. 1は(63)のstep 4に相当する居住基地を想到している。 そろぞれの居住基地は回廊(薄青)で結ばれ、非気密で行き来可能である。)

 

  一方、このような基地の拡張や維持に用いる資材を、すべて補給ミッションに頼ることは大きな負担である。拡張された領域には、多様な3D造形装置等が導入され、火星資源から、資材や資材の一部を生産、代替するための研究を行うラボや工場が設置されると考えることができる。

  また、居住域の拡大による生命維持装置の増大や、火星資源の利用の試みにより、電力消費量は当然格段に増大すると予想され、事実上制限の無い基地外に、より広大な太陽電池システムを設置することで需要を賄える可能性があるものの、この段階においては、安定した電力供給を目指して、艦載用をベースにした発展型小型原子炉を設置することも考えられる(図5.c3)。                        

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(図5. 新たに拡張された領域2には、火星資源から建築資材等を生産するためのラボや工場が設置される。居住基地群c3の別棟として、小型原子炉を保持した領域3が構築される。)

  一方、気密域の生命維持環境が安定化すると、拡張したすべての領域における作業や居住の場が、ユニットである必要はなくなり(一部は緊急避難用に残されるものの)、多くは火星に適した非気密のプレハブ建築物のようなものに移行していくと思われる。

 

  さて、火星の前線基地が、居住基地となり、コロニーや町のようなものに近づいて行く時、住む場所としてのライフスタイルの転換点は何であるのか 考えてみると、その1つは入浴の導入であるように思う。

  身体の清潔化に関して、ちなみにISSでは、すすぎ不要のドライシャンプーや石鹸を含んだタオルを使用しており、火星前線基地においても、ISSとほぼ同様の状況になることが予想される。一方、居住ミッションが始まり、火星の水の利用に成功し、水の供給に余裕がある段階になると状況は変化してくる。頻度は低いながら、入浴できる可能性が出てくるわけである(排水は以前同様、再利用されるであろうが)。

  

(続く)