火星-居住3 (63)

 (火星-居住2 (62)より)

 

ユニットは、最初の基地の構築後、必要に応じて補給ミッションにより追加され、ハブから分枝する枝のような構造に連結されたり、或いは計画に沿って別の構造に連結されうる(図1. step1、2)。ユニットの幾つかは、水回収、酸素発生、二酸化炭素吸収等の生命維持装置を含み、拡張する住空間の生存環境を維持する。別のユニットは、火星の水の貯蔵や浄水システムに使われ、一部の水は回収水と合わされ、酸素発生に使用されると考えることができる。さらに、火星-居住2 (62)に従うならば、一部のユニットは、植物工場、コオロギや鶏の繁殖ラボに割り当てられ、食料自給の初段の研究がなされることになる。

  ユニットの連結は、遠隔操作により、火星上で或いは地球からの管制で半自動的に行われるが、ユニットと同時に送り込まれた多目的汎用ロボットのようなものの補助を受けて行われることも推定できる。

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(図1. type 1とtype 2、2種類のユニットにより構成された基地が例示されている。step 1は最初期の基地の構成の1つであり、補給ミッションによりユニットが追加され、step 2のように複雑化、多機能化していく。)

  さて、居住ミッションの転換点となる、火星の水の利用に成功し、その水を用いた食料自給の試みも軌道に乗り始め、滞在する人員も増えてきた頃、居住ミッションが、次の段階に入ることが想像できる。ユニットよりなる基地全体を光透過性のある外壁で覆い(底部は気密性を勘案して施工され)、簡潔に言えば、温室状或いはドーム状の構造にすることである(図2. step 3)。                                                                            f:id:on-kojin:20220228214226p:plain

(図2. step 2の構造が、隔壁に覆われstep 3の構造となる。外壁と結合するユニットはエアロックとして機能している。)

外壁には、火星表面に降り注ぐ放射線を安全なレベルまで軽減し、基地の気密性を担保しうる樹脂や硝子材料が使用されるが、このような居住ユニットの内包化は、基地の将来的なコロニー化、都市化において重要な意味を持つと考えられる。ユニット段階の基地では、ユニット外は呼吸のできない過酷な寒冷地である。一方、内包化で、ユニットの外側に生活空間が拡張され、生活に多様性がもたらされると、それまでの前線基地から、居住地という趣きが深まることとなる。

  内包化した基地の規模にもよるが、例えば、ユニット間の空き地に土壌を作り、それまでユニット内のみであった食用植物の生産を拡張したり(サツマイモなども候補である、甘藷(37))、花咲く庭を作ってもよいわけである。さらに、基地の一角に池を造成してもよく、池には鑑賞と実利を兼ねて、ハスやジュンサイ等の水生植物を繁殖させ、池を含めて擬似生態系を構築することも考えられる(図3. step 4)。

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(図3. step 4、より多くのユニットが結合され、農耕地や人工池を含む居住基地)

  このような居住地は、過酷な外部環境に対峙して、地球の日常と似た環境を提供し、人にやすらぎを与えるという面を持ちつつ、外壁の密閉性に支障が生じた時は、速やかに安全な居住ユニット内に退避することを可能にしている。

 

(続く)