曲 (42)

   一息入れたい時は、ジャコ・パストリアス(Jaco Pastorius)の「Three Views of a Secret」をよく聴く。一瞬、芥川龍之介の「藪の中」を想起させるこの曲を、初めて聴いたのは、アルバム「The Birthday Concert」(ちなみに自分が購入した2番目のCDアルバムである)の収録曲としてで、マイケル・ブレッカー(Michael Brecker)のテナーサックスが印象的であった。その次に、「Word of Mouth」の収録曲を聞くことになるわけであるが、主旋律はトゥーツ・シールマンス(Toots Thielemans)のハーモニカで、ハーモニカにこれほどの表現力があるのかと感心したことを覚えている。さらに、「PASTORIUS, LIVE IN NEW YORK CITY」を入手し、ハイラム・ブロック(Hiram Bullock)の奏でるエレキの、賛美歌のような清澄な旋律に、これまでとはまた違った衝撃を受けた訳である。

  しばらくの間は、上の3つのCDを聞き回していたが、時間が経つにつれてどうしても新鮮味が無くなってくる、そんな時、動画投稿サイトで、プロかアマチュアかわからぬが十分視聴に耐える同曲のカバーを見て、今度はそのカバーを聞くようになった。カバーといっても、グループによるもの(当然、ベースやドラムスや他の楽器もある訳であるが)、ピアノやギターによる個人演奏など様々である。その中でピアノの演奏が気に入り、今度は、それを主に聞くようになった。

  そのカバーを一二年、聞いていたであろうか、やはりどうしても飽きてくる。いい曲なので誰もが演奏したいと思うのであろうが、親切にそのような演奏の助けになるような、曲のコード演奏のみを同サイトにアップしている人がいる。元々、ゆったりとしたインストゥルメンタル曲なので、コード進行のみでも結構聞きごたえがある。そのコード進行も複数アップされており、人によって特色があるのだが、現在は、その複数のコード進行の「Three Views of a Secret」を聞いている状況である。ジャコ本人の原曲から始まり、20年以上の時を経て、コード進行に至ったわけであるが、今後どうなるかは不明である。やはり原点回帰であろうか。

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  朝、起きた後よく聞くのが、ジャコ・パストリアスもメンバーであったWeather Reportの「Birdland」である。何処か自然豊かな土地あるいは島で、夜が明ける少し前、人々が活動を開始する前に、雄鶏が鳴き声を上げ、それを合図とするように森中の鳥が其処此処で鳴き始めるというのが、この曲に対する自分のイメージであった。ところが、程なくこの「Heavy Weather」というアルバムに収められた「Birdland」という曲は、サックス奏者チャーリーパーカー(Charlie Parker)のあだ名バードに由来する、NYのジャズクラブ、バードランド(Birdland)に因んだ曲である事が判明するわけである。鳥など関係ないではないか、深読みであったか などと思ったが、「Heavy Weather」というアルバム名だけに、作曲者のジョー・ザヴィヌル(Joe Zawinul)が、この曲に嵐の前に鳥が鳴き始めるモチーフを込めている可能性はあるわけである。

  嵐と鳥を意識する曲なら別にある。キング・クリムゾンの「Larks' Tongues in Aspic, Part Two」は、ジョン・ウェットン(John Wetton)の畳み掛けるような重低音の繰り返しと、その間の デヴィッド・クロス(David Cross)の伸び上がるようなバイオリンが特徴的な名曲である。実際、聞いてみないと真意はわからぬが、自分は聴き始めより、ベースのパートは嵐の襲来で、バイオリンのパートは、曲名にもあるように、雲雀の囀りというイメージをずっと持ってきた。ところで、動画サイトには原曲とほぼ同じ構成のカバーが幾つかアップされている。個人的には、ベースのパートを男声で、バイオリンのパートを女声で行う混成合唱のカバーが異色で面白いと思うのだが、何処かの合唱部の皆さん、挑戦して頂けないであろうか。

  鳥繋がりであるが、グレッグ・ハウ(Greg Howe)の「Bird's Eye View」は、本人の動画サイトで同曲を知り、最近聴き始めた曲である。タイトルにあるように、この曲は、鳥が目にした景色の変遷をモチーフにしているようであり、最大の特徴は、同じフレーズを繰り返しながら、少しずつ演奏法を変えて、盛り上がっていく様式である。初めて聞いたとき、これはラヴェルの「ボレロ」では無いかと思ったわけであるが、後半にはタッピングによる鳥の囀りも入っており、一度でお気に入りの曲となった。自分はどうやら、鳥の囀りを含む、或いはモチーフにした曲が好きなのかもしれない。

  さて、今回は曲の話であった。上に加えて他にも様々な曲を聞くが、それらの曲が、自分にとってどのようなものであろうかと考えた時、ビタミンやサプリメントなのかもしれないし、実際は栄養そのものである可能性もあるのではないかと思っている。