拳 (44)

  動画投稿サイトのお薦めに、よく「北斗の拳」関係が選ばれていることがある。確かに以前、偶然見つけた同作品の纏めのような映像を、幾つか懐かしく見ていたので、心当たりはあるわけである。それらを見ていると、北斗神拳や数々の流派、そして数多の秘技、奥義など、よくぞここまで色々生み出したものだと感心するわけであるが、今回は、視聴時の事を思い出しながら、投稿サイトによくある推理板のように、北斗の拳に出てくる技について少し考えてみたい。

  物語に出てくる南斗水鳥拳のレイや南斗鳳凰拳サウザーは、素手で相手をスライスしたり、岩製とおぼしき物体を綺麗に切り裂いている。これら拳法の基盤にあるのは、空手、少林寺拳法太極拳などと思われるが、一体どうしたらこのようなことが可能になるのか。刃物鋼や工具鋼のような強靭な材質で手刀を作り、超高速で動かしたとしたら、対象を破壊することはできるかもしれないが、綺麗にスライスことは難しいように思われる。やはり最初からファンタジックな力を認めるしかないのであろうか。

  そこで、以下のように考えてみた。上記の技では、手刀で対象を刃物のように切り裂いているのではなく、切断の想定軌道にある分子を瞬時に移動させているだけであり、手刀の振る舞いは、分子移動の部位を確定しているに過ぎないというものである(分離したパーツ間を少し押し拡げるという作業ぐらいはあるかもしれない)。そして、その想定軌道における分子テレポーテーションの能力こそが、修練によって得た彼らの能力の本質であるというものである。ロシアや中国の人物がガラス瓶の中の錠剤を出し入れする映像を見ることがあるが、それに関連した能力と見るわけである。この解釈の一番の利点は、この能力に従えば、肉体も岩も関係ないということである。

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  一方、北斗神拳であるが、自分には南斗聖拳よりも北斗神拳の方が現実味があるように思われる。特にトキの使う「有情拳」である。北斗神拳に出てくる経絡秘孔は、実際にある経絡上の経穴であり、同拳ではそこに修練によって極限まで高めた気のようなエネルギーを打ち込むことにより、体を内部から破壊している(体調が悪くなったり、戦意を喪失するぐらいのことはあるかもしれない)。そして、トキの有情拳では、苦痛を感じることなく、快感を得ながら死に至るという。

  おそらく有情拳では、致命の秘孔と同時に、或いは直前に突く秘孔があり、その秘孔を突かれると脳内でエンドルフィン等のオピオイドペプチドの爆発的な産生が起こる、すなわち、脳内麻薬の産生が誘導されたり、神経伝達に必要な細胞膜上の脂質ラフトの形成が抑制されるといった変化が起きていると考えるわけである。中国では針麻酔による外科手術が行われているので、経穴を刺激することにより痛覚を無くすというのは、十分有り得る話ではある。

  さて、今回は、北斗の拳の推理板であったが、北斗神拳の物語は、時系列的に、「蒼天の拳」、「蒼天の拳 リジェネシス」、「北斗の拳」と続いており、もちろん、北斗の拳ケンシロウの、前2作は先々代、霞拳志郎の物語である。この歴史に残る物語を完成させるには、第63代伝承者霞羅門(リュウケン)の物語があっても良いのではないかと思っている。兄を失ってから63代を継ぐまでには、様々な猛者との戦いがあったはずであり、継承者争いに絡んだ北斗唯一の女性拳士が存在したと考えるのも面白いではないか。いかがであろうか。